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カクヒトは、キャンパスノートを生活の一部として大切に使ってくださっている方にインタビューし、使い方や書くことへのこだわりをご紹介しています。

一般社団法人 KAI OTSUUCHI 理事長 平舘 理恵子さん

故郷に活気を取り戻すためのキャンパスノート

既存の枠組みがなくなった東北の被災地では、地域とそこに住む人々の活性化を志した、新しい働き方・学び方の実践が始まっています。商品・サービスを通じて人々の「働く・学ぶ」をサポートする私たちにとって、何か学べる点があるのではないかと取材に出向きました。
取材先で出会ったのは、キャリアや学びのチャンス、自発性や挑戦するスタイル、公と民間の連携を生み出す挑戦的な事業を牽引する20代・30代。震災から4年、若きフロンティア4組のインタビューをお届けします。
今回登場していただくのは、津波で甚大な被害を受けた岩手県大槌町で、IT事業を根付かせようと奮闘する事業家 平舘理恵子さんです。

平舘理恵子さん
一般社団法人 KAI OTSUUCHI 理事長
(HP:http://kai-otsuchi.com/index.html

岩手県大槌町出身。震災を契機に大槌町と関西大学によるIT人材育成プログラム“SHIP”に参加、アプリ開発のプログラミングを学ぶ。現在はKAI OTSUCHIの理事長として、迎え入れた大槌町民のスタッフを指導しながら、アプリ開発を中心にIT関連の事業を進める。自ら開発した読み聞かせ絵本アプリ「よこはまガイド絵本」が、横浜市主催のアプリコンテスト「YOKOHAMA Ups!」で最優秀賞を受賞。

KAI OTSUCHIさんが開発されたアプリを拝見しました。
絵本やカメラのアプリが中心ですね。

京都や福岡の企業と開発した観光用カメラアプリ、横浜を紹介する絵本の読み聞かせアプリ、子ども向けの防災教育アプリなどの開発実績があります。まだまだスタートしたばかりの会社ですので、私のカメラの経験だとか、子どもを持つお母さんの視点など、従業員の得意分野を生かしたいと思っています。

子どもを育てながらアプリ開発ですか。かっこいいママですね。

私を含めた9名の従業員の内、5名が女性で、私以外は皆さん”お母さん”です。大槌町の住民の方々で、アプリ開発初心者としてKAI OTSUCHIに入社されて、学びながら働かれています。

初心者でもアプリを開発できるんですか。

皆さん工業系の学校を出ているわけでもなく、ハローワークを通じて応募されてきています。「地元でiPhoneのアプリがつくれるの?やってみたい!」といったノリです。入社1~2年ですが、プログラミングを覚えていただき、実際に開発に参加していただいていますよ。それに、アプリ開発に求められる能力はプログラミングだけではありません。アイディアやデザインも同じように大事です。アイディアだったらITの経験がなくても、各自の個性を発揮できますよね。

入社された町民の方には、平舘さんが指導されているんですか。

“SHIP”プログラムを終えてKAI OTSUCHIに入社したのが、私ともう一人いました。初年度はその2名で、5名の町出身の従業員を指導してきました。2年目は1年勉強した5名の従業員も教える側にまわってくれて、従業員同士で教え合う好循環が回り始めています。

20代〜50代まで従業員も幅広い

色々な観点で新しさがあるように思います。地方の沿岸部で、しかも経験や年齢に関係なくIT関連のキャリアチャンスがあるという。

ゆくゆくは在宅勤務も導入して、より幅広くチャンスを提供したいですし、KAI OTSUCHIだけで大きくなろうとは思っていません。KAI OTSUCHIで経験を積まれた方が、卒業して個人で事業を起こす人が出てきても良いと思います。大槌町にさまざまな形態のIT事業主が生まれ、KAI OTSUCHIがハブ機能になって、大槌町のIT事業ネットワークで多くの案件をこなせるようになったら良いと思います。

すっかり事業家の顔ですが、震災のときは盛岡でカメラマンのアシスタントをされていたんですよね。

そうなんです。まだ4年前のことですよね。震災前は、まさか生まれた地である大槌町に戻って働くとは思ってもいませんでした。

震災がきっかけで変わりましたか。

はい。20年以上、当たり前のように見てきた風景が様変わりしたのを見て、何かできることはないかと考えました。知っている土地だからこそ、一日二日のボランティアでは済まされない気がして、大槌町で写真館でも開こうか、とかアレコレ悩んでいるときに出会ったのが、大槌町と関西大学が協定を結んでIT人材を育成する“SHIP”というプログラムでした。

オフィスのある小高い丘から眺めた風景。視線の先に美しい海が広がる(左)

震災前約1万5千人だった人口は、震災での犠牲、町外への転出などで2割減少。現在は、瓦礫が片付けられた町の大半が更地となっている(右)

元々ITに興味があったのですか

いいえ、なかったです。でも、大学で美術の勉強をしていたので、アプリであればデザインの技能は生かせるかなと考え、思い切って飛び込みました。2年間かけてプログラミングの勉強をして、終了後KAI OTSUCHIに入社して、今に至ります。勉強中、コクヨさんのキャンパスノートにお世話になりましたよ。

おお、A4サイズのノートですね。(中を見て)それにしてもきれいに書かれますね。

ありがとうございます。私、書かないと、覚えられないし、きちんと論理的に理解できないんです。学習方法がeラーニング中心だったこともありますが、聞いているだけだと、わかった気になるけど実は頭の中から流れてしまっています。書きながら、なぜこれはこうなるのか、とか考えていますね。手と連動して頭に入っていく感覚があります。なので、ノートにはどんどん書きます。A4サイズがいいのも、大きくてたくさん書けるからです。

プログラミングの式が1行ごとに整然と書かれている。補足や強調は赤字で。

アプリのインターフェースの図付き。見出しは四角囲み、目立たせたいことは吹き出しで。色は黒・赤・青の最大3色。

詰めて書かない、筆記具の色を使いすぎない、大事なことは吹き出しにする、などノートを取るコツのお手本のようです。

このノートは、人に教えるときや自分でわからなくなったときに、今でも見返します。キャンパスノートは、罫線の濃さが好みです。ノートによっては文字より濃い罫線のものもありますが、この色合いは絶妙ですよね。あとは、ちょっとした目印やラインなど、昔からキャンパスノートの書式に慣れているので、他のノートを使ったときに「あれ、ない・・」ってなります。

平舘さんのチャレンジの近くにキャンパスノートがあることがうれしいです。それにしても、大きなチャレンジですよね。

そうですね・・。KAI OTSUCHIに入社して、あれよあれよという間に理事長に就任。アプリ開発自体が初めてなのに、一気に事業を経営していかなくてはならなくなって。初心者の町民の方に教えながら、一方でアプリの開発実績を着実につくっていくことの両立が大変でした。

どうやって乗り越えたんですか。

気力だけですね。あとは雇っている方々の生活も背負っているという責任。でも辛いことだけではなくて、必死にやっていると助けてくれる方や一緒に考えてくださる方が出てきます。おかげで、今はアプリだけでなく、色々なお仕事や相談をいただけるようになりました。町から委託を受けて、小中学校のICT教育でのタブレットやアプリの活用についてアイディアを出したり、復興計画の3D CADイメージの制作も行っています。

仲の良いご夫婦。ご主人の平舘豊さんは、大槌町役場の職員であり、SHIP研修を共に受けた。当時から奥様を支える。

町からの期待も大きいですね。

町内にIT企業があることで、学校としてもICT教育に挑戦しやすい、と言われています。何かあれば、すぐサポートに駆けつけられますしね。大槌町は、もともと水産業と林業の町です。昨今「6次産業化」なんて言葉が叫ばれていますが、旧来からある産業と新しい産業がうまく連携して、一緒になって町を活性化させていきたいです。ITは発信するためのツールですから、大槌町のさまざまな魅力を発信していきたいです。

夢は広がりますね。

町長とは「大槌町をミニミニシリコンバレーにしよう!」なんて話もしているんです。

本日はありがとうございました。

(インタビュー@大槌町KAI OTSUCHIオフィス、2015年2月28日)

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