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カクヒトは、キャンパスノートを生活の一部として大切に使ってくださっている方に皆様にインタビューし、使い方や書くことへのこだわりをご紹介しています。

片山 由紀子さん

「天気の足跡」を記録するキャンパスノート

今回お話を伺ったのは、気象予報士の片山由紀子さん。1996年から17年間にわたり、一日も休まずに書き続けている「気象原稿ノート」は今年で90冊目。毎日の気象データからトピックになりそうな事象を見つけて毎日書く。書くことで自分自身の感覚を磨くという片山さん。今回は普段何気なく耳にしている気象情報の舞台裏の物語です。

片山 由紀子さん

(株)ウェザーマップに所属する気象予報士。民放キー局で、異常気象の解説から、天気予報の原稿まで幅広く天気情報を担当する。Yahoo!ニュース内の気象ブログ「気象予報士のノート」( http://bylines.news.yahoo.co.jp/katayamayukiko/)は分かりやすい解説に定評があり、ファンも多い。

気象予報士さんというと「お天気キャスター」のイメージが強いのですが、片山さんはどのようなお仕事をされているのでしょうか?

私は気象キャスターが読むための原稿を書いています。裏方の仕事ですね。気象庁が毎日発表するデータをもとにした気象予測の中から、その日ならではのトピックを抜き出して原稿を作ります。テレビにはどうしてもニュース性が求められるので、昨日と何が違うのか、例年と何が違うのか、といったことを見つけて、短いストーリーにしていく仕事です。

確かに、何気なく聞いているお天気コーナーですが、単なるデータだけではなく、いろんなことをお話されていますね。

気象予報のデータだけならば、いまやネットをみれば誰でも手に入ってしまいますから。見る人に「へぇ」と思ってもらえる原稿をどうやって作るかをいつも考えています。
そのほかには、契約企業向けの気象コンサルティングの仕事もありますね。日常的に気象に気を配る必要がある航空会社などには気象予報士の資格をもった方が常駐していらっしゃいますが、日常的ではないにせよ、天気がビジネスそのものを大きく左右するシーンって結構あるんですよ。たとえば、屋外で行うイベントやコンサートですね。莫大なお金をかけて、何万人という人を集めてやることなので、いつ開催すべきか、という判断や、もし天気が悪化した場合、決行すべきか中止すべきか、といった、とても重みのある判断を求められます。

実際の気象データをもとに、その現象がなぜ起こるかをお話ししてくれる片山さん。
気象に関する知識がまったくない人にも分かりやすい。

確かに。とても影響力が大きいお仕事だと思いますが、なぜ気象予報士になろうと思われたのですか?

大学在学中だった1994年に気象予報士制度というのができまして、それまでは気象庁の気象予報官しかできない仕事が民間に解放されました。大学では応用物理学を専攻していたのですが、その道で仕事をするのか、別の道に進むのか、悩む時期でもありましたし、気象は嫌いではなかったのでやってみようかな、と思って受けることにしたんです。1995年の試験で合格して、今の会社に入りました。

すぐに受かってしまうところがスゴイです・・・。

国家資格というのは始まったころが一番ハードルが低いんですよ(笑)。国がその技能を持った人を作りたくて資格制度を設けるので、最初のうちはある程度の数を世に送り出さないといけないですからね。今よりだいぶ合格率高かったと思いますよ。

そして、仕事を始められた直後の1996年から、このノートの記録が始まっているわけですが、何かノートに書こうと思ったきっかけがあったのでしょうか?

どんな仕事でも同じだと思うのですが、資格をもっているだけで仕事ができるわけはないですよね。でも、傍から見れば、資格があるのだから分かって当然だと思われます。天気は時として人命をも左右するという事実を知れば知るほど、間違ったことを伝えてしまったらどうしよう、予報どおりにならなかったらどうしよう、という「怖さ」が増していきました。でも、「怖い、怖い」と思っていても何も変わらなくて、「怖さ」を克服したかったら結局学び続けることで自分に自信をつけていくしかないと思ったんです。それで、日々の天気から読み取れる変化を記録し、変化の記録を積み重ねることで、一つ一つを自分の経験として身につけていくようにしようと思って。

気象庁が発表する気象データから読み取れる「いつもと違うこと」を考え書き連ねていく。報道の仕事はニュース性が必要とされるため、毎日続けることで変化を見つける「センス」が鍛えるように思う、と片山さんは言う。

それで始めたのがこの記録なんですね。しかし、17年前といえばすでにパソコンが出回っていましたよね。「記録」だったらパソコンの方が効率的な気もしますが、あえてノートにこだわったのはなぜなのでしょうか?

パソコンは「コピー&ペースト」ができてしまうからダメですね。各地の観測データやアメダスの情報などが毎日気象庁のホームページで発表されるのですが、どうしても必要でないものまで切り取ってきてしまうんです。確かに効率的に「記録」できますし、検索性も高いですが、自分には何も残らない感じがします。自分の手で書くからこそ、必要なことと必要でないものをちゃんと分けようとするし、分けようとするからこそ記憶にとどめることができる。それを繰り返すことで、自分の血となり肉となるような気がするんです。

最近のノートは箇条書きで気付いたことを書き留めるスタイル。今年4月下旬のページでは、日に日に暖かくなっていく様子が記録されている。

なるほど。そうやって踏み出した小さな一歩を、17年間一日も休まずに続けていらっしゃるところがまたスゴイと思うのですが、途中で「もういいかな」とか「やめようかな」と思ったことはなかったですか?

やめようと思ったことはないですね。こうやってノートに書いていると本当にいろんなことに気付くことができるんですよ。今日と同じような天気は何年か前にもあったな、ということも自分で書くから何となく覚えているし、そのときは次に何が起こっただろう、ということもこのノートで確認することができます。こういう細かいことの積み重ねによって、人より早く変化に気付いた、という経験を1回でもすると、やめられなくなりますね。

なかなか真似できないことではないかと思います。

ノートに書くということに対して、ルールみたいなものを作っていないのが良いのかもしれないですね。量も内容もそのときの気付きを、その時に書きたいように書いています。

初期のノートには天気図のコピーを貼りつけて気づいたことを書くスタイル。

着目した地域のお天気の変化を表組で書いたページ。ノートはその時々に注目した情報が見やすく整理されている。

これからの片山さんの目標がもしあれば教えてください 。

やはり、子供からお年寄りまで誰にでも、分かりやすく伝えることでお天気に興味を持ってもらえたら、とてもうれしいですね。天気は誰にでも関係があることだからこそ、どうしてそうなるのかな、ということを知ってもらいたいと思います。

ではこれからもノートは片山さんの相棒ですね!

そうですね。今の時代、実は、予報だけならコンピューターがかなり高い精度ですることができます。日本の天気予報の精度は世界でもトップクラスです。だからこそ、気象予報士という人間がそこに介在する価値について考えることがあります。やはり、どうしてその変化が起こるのか、次にどんなことに気をつけなくてはならないかを誰にでも分かるようにお伝えすることが大事なのかなって思っています。なので、自分自身のセンスを磨くためにも、ノートはこれからもきっと使いますよ。丈夫で使いやすいノートをこれからも作り続けてください。

はい!もちろんです!これからもよろしくお願いします。

記念すべき90冊目のノートと片山さん。
「天気は、答がない問題」だからこそ、「答に近づくためには日々学ぶこと、知識を付けることが必要」とのこと。これは天気だけでなく色々なことに当てはまりますね。

(インタビュー@ウェザーマップ本社)
ご協力:株式会社ウェザーマップ http://www.weathermap.co.jp/

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